現代貨幣理論(MMT)を勉強する
今回は、話題の現代貨幣理論(以下、MMT)について勉強したことをまとめていこうと思います。
MMTを端的に説明すると、
財政拡大の大小は、インフレ率で判断するべき
分かりにくいので、通説と並べてみます。
通説は、
財政拡大の大小は、政府債務残高(対GDP比)で判断するべき
つまり、通説は、
その国の経済規模に即した借金の範囲内で、公共投資などの財政拡大をするべきだ
という考えですね。
一方で、MMTは、
・物価が下がり貨幣価値が上がっている経済状況(デフレ)では、政府債務残高の大小に関係なく、公共事業などの財政拡大をして、景気をよく(インフレ)し、
・過度に物価が上がり貨幣価値が下がっている経済状況(過度なインフレ)では、政府債務残高の大小に関係なく、公共事業などを減らしたり、増税をして、市場から貨幣を吸い上げて、景気を落ち着かせる(適度なインフレ)にするべき
という考え方です。
ここに、MMTと通説とでは前提条件に決定的な違いがあります。
それは、MMTが、自国通貨建で国債を発行している場合、政府債務残高が過大になることで財政破綻(デフォルト)することはあり得ないとしている点です。
この前提条件が、世界中を巻き込む大論争になっているのです。
一般的な感覚からすれば、政府も家計と同様に借金はいずれ返さなくてはならない、と考えるでしょう。
しかし、MMTは、ビジネスなどの家計と政府の財政は、全く異なるものであり、分けて考えるべきだと主張します。
その理由として、
・政府は通貨発行権を持っているため、通貨発行権を持っていない家計とは異なり、
・また、国債の償還が必要になったとしても、新たに国債を発行して借り換えることが可能であるから
としています。
通説とMMTとでは、前提条件(財政破綻するかどうか)が異なるため、どちらを採用するかにより政策意思決定が全く異なるものになります。
この180度違う前提条件ゆえに、主流派経済学とMMTは真っ向から対立し、これほどの議論になっているというわけです。
ここまでが、MMTを巡る議論の端的なまとめになるかと思います。
さて、MMTに関する説明は、YouTubeを始め、本や雑誌など、あらゆるものが取り上げており、そのコピーをこのブログで書くのは、あまり面白いものだとは思いません。
そこで、私がこのブログを通じて書きたいのは、MMTの是非はもちろん、その背後にあるモノの考え方です。
ある目的に向かって走る「処理能力」と、その目的自体の正否を考える「思考力」とは違います(かつてM・ウェーバーは、それを「目的合理性」と、それ自体価値がある「価値合理性」の区別として論じたことがあります)。
現代は、勉強にしろ、仕事にしろ、ある目的に向かって走る「処理能力」が求められ、その目的自体の正否を考える「思考力」が求められない社会になっています。
私が試みたいのは、MMTの解説に加えて、思考力自体を問うてみたいのです。
次回以降、MMTの議論を深掘りして考えたいと思います。
その過程で、貨幣とは何か、なぜ貨幣に価値があるのか、デフォルトしないのであれば税金の意味は何か、という事を細切れにして説明しようと思います。
ただ、誤解を招かないように注意を払ったり、調べながら書くので、MMT解説は飛び飛びになると思います。